人身傷害保険とは?搭乗者傷害との違いと、使っても等級が下がらない仕組み【2026年】

人身傷害保険は、過失割合に関係なく実際の損害額が支払われる補償です。定額払いの搭乗者傷害保険とは支払い方が違います。人身傷害保険だけを使った事故はノーカウント事故となり、翌年の等級は下がらず、事故有係数適用期間にも加算されません(三井ダイレクト損保・2026年8月時点)。

この記事でわかること

  • 人身傷害保険と搭乗者傷害保険の支払われ方の違い(実損払いと定額払い)
  • 過失割合が自分にもあるとき、相手から取れない分をどう埋めるか
  • 人身傷害保険だけを使った事故が等級にも事故有係数適用期間にも響かない理由
  • 「車内のみ補償」と「車内・車外補償」のどちらを選ぶかの判断軸
  • 人身傷害保険の保険料が車の型式でも変わるという、見落とされやすい仕組み

公的情報源: 損害保険料率算出機構「自動車保険 型式別料率クラスの仕組み」(参照)/国土交通省「自動車損害賠償保障制度(自賠責)」(参照

結論から

人身傷害保険は「自分がケガをしたときのための保険」と説明されがちです。それだと半分しか伝わりません。

この保険の役割は、相手から取れない分を自分の保険で埋めることにあります。事故で自分にも過失があると、損害額の全部を相手からは受け取れません。過失が3割なら、相手が払うのは7割までです。残る3割を埋めるのが人身傷害保険になります。

この記事の要点
  • 人身傷害保険は実損払い。搭乗者傷害保険は定額払いで、役割が違う
  • 過失割合に関係なく、契約した保険金額の範囲で実際の損害額が支払われる
  • 示談を待たずに支払われるため、治療費の立て替えが長引かない
  • 人身傷害保険のみの支払いはノーカウント事故=翌年の等級は下がらない
  • さらに事故有係数適用期間にも加算されない(三井ダイレクト損保が明記)

人身傷害保険の金額をいくらに設定すると保険料がどう動くかは、同じ条件で見積もれば1回で確認できます。

目次

人身傷害保険とは

人身傷害保険とは、契約した車に乗っている人が事故でケガをしたとき、実際の損害額を過失割合に関係なく補償する保険です。

チューリッヒは人身傷害保険を「ご契約のお車に搭乗中の運転者または同乗者が、自動車事故によって被った死傷その他の損害を補償する保険」と説明し、支払い方を実損払いとしています。

補償の対象になるのは、治療費だけではありません。

人身傷害保険で支払われるものの例

  • 治療費:入院・通院にかかった実費
  • 休業損害:ケガで働けなかった期間の収入減
  • 逸失利益:後遺障害が残ったときの将来の収入減
  • 精神的損害:慰謝料にあたる部分

補償の全体像のなかでの位置づけは自動車保険の補償内容を完全解説で整理しています。

人身傷害保険と搭乗者傷害保険の違い

人身傷害保険は実損払い、搭乗者傷害保険は定額払いで役割が違う。
図:治療が長引くほど差が出る。人身傷害は実費に応じて積み上がり、搭乗者傷害は増えない

違いは1点に集約されます。実際にかかった額を払うか、決めた額を払うかです。

支払われ方の比較(2026年8月時点・各社公式表記)

比較項目人身傷害保険搭乗者傷害保険
支払い方実損払い(実際の損害額)定額払い(あらかじめ決めた額)
過失割合の影響受けない受けない
示談の成立を待つか待たずに支払われる待たずに支払われる
治療が長引いたとき実費に応じて増える増えない
両方つけられるかつけられる(重複しない)つけられる(重複しない)

出典: チューリッヒ「人身傷害保険とは。搭乗者傷害保険との違い」

この2つは競合しません。役割が違うためです。

搭乗者傷害保険は早さが持ち味になります。決められた額なので損害額の確定を待たずに出ます。一方の人身傷害保険は深さが持ち味です。治療が長引くほど、実費に応じて金額が積み上がります。

どちらか一方なら人身傷害保険が優先です。搭乗者傷害保険は定額なので、治療が長引いたときに足りなくなります。

人身傷害保険は過失割合に関係なく実損が出る

ここがこの保険の要になる部分です。自分に過失があっても、損害額が減らされません。

具体的な数字で見ます。損害額が1,000万円、自分の過失が3割の事故を想定します。

損害額1,000万円・自分の過失3割の場合(金額は説明用の設例)

受け取り方相手の対人賠償から自分の人身傷害から合計
人身傷害保険なし700万円700万円
人身傷害保険あり700万円300万円1,000万円

差は300万円です。自分の過失分は、相手の保険からは1円も出ません。ここを埋められるのは自分の保険だけになります。

過失割合は、事故の状況によっては話し合いが長引きます。人身傷害保険は示談の成立を待たずに支払われるため、治療費を立て替え続ける期間も短くなります。

過失割合そのものの決まり方は交通事故直後の対応マニュアルで扱っています。

人身傷害保険を使っても等級は下がらない

人身傷害保険のみの支払いはノーカウント事故で、翌年は1等級上がる。
図:同じ事故でも使った補償で翌年の等級が変わる(三井ダイレクト損保/おとなの自動車保険)

保険を使うと等級が下がる、と身構える人は多いはずです。人身傷害保険については、その心配が要りません。

三井ダイレクト損保は用語解説で、人身傷害保険を含む一定の補償だけを支払った事故をノーカウント事故と定義しています(2026年8月時点)。

そのうえで「ノンフリート等級制度では事故件数としては数えず、この事故による翌年のノンフリート等級ダウンはありません。また、翌年の事故有係数適用期間に加算はされません」と明記しています。

事故の種類と翌年の等級(2026年8月時点・各社公式表記)

事故の種類翌年の等級
3等級ダウン事故3つ下がる対人賠償・対物賠償・車両保険を使った事故
1等級ダウン事故1つ下がる盗難・落書き・飛石・台風による車両保険
ノーカウント事故下がらない(1つ上がる)人身傷害保険・搭乗者傷害特約・弁護士費用補償特約のみ

出典: 三井ダイレクト損保「ノーカウント事故」おとなの自動車保険「事故の種類と等級ダウン」

見落とされがちなのは表の3行目の後半です。ノーカウント事故は「据え置き」ではありません。事故がなかったときと同じ扱いなので、翌年は1等級上がります

事故有係数適用期間に加算されない意味

等級が下がらないこと以上に効くのが、この点です。

事故有係数適用期間とは、同じ等級でも割引率の低い「事故有」の係数が使われる期間のことです。3等級ダウン事故を起こすと3年間つきます。人身傷害保険のみの支払いなら、この期間が伸びません。

つまり同じ事故でも、どの補償を使ったかで翌年以降の保険料がまったく違うことになります。自分のケガだけで済み、相手の物にも自分の車にも損害が出ていないなら、人身傷害保険を使っても保険料は上がりません。

3等級ダウンしたときの実額は3等級ダウンで保険料はいくら上がるかで等級別に計算しています。

人身傷害の保険金額は3,000万円・5,000万円・無制限などから選びます。金額ごとの保険料差は会社によって幅があります。

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人身傷害保険の「車内のみ型」と「車内・車外補償型」

車内のみ補償型は乗車中だけ、車内・車外補償型は歩行中の自動車事故も対象になる。
図:まず車内のみで確保し、余力があれば車外へ広げる順序が効率的

契約時に選ぶところが1つあります。補償される場所の範囲です。

チューリッヒは人身傷害保険に「車内のみ補償」と「車内・車外補償」の2タイプがあると説明しています。

2つの型の違い

  • 車内のみ補償型:契約した車に乗っているときの事故だけが対象。保険料は安い
  • 車内・車外補償型:契約した車に乗っていないとき、歩行中や他人の車に乗っているときの自動車事故も対象

判断は家族構成で分かれます。

車内・車外補償型が向くケース

  • 歩いて通勤・通学する家族がいる:歩行中の自動車事故が対象に入る
  • 自転車での移動が多い:自動車との事故が対象に入る
  • 車を1台しか持っていない:他の契約で補われる余地がない

車内のみ補償型で足りるケース

  • 複数台を契約している:どれかで車外まで補償していれば重ねる必要は薄い
  • 移動がほぼ車のみ:車外の事故に遭う機会が少ない
  • 医療保険・傷害保険で厚めに備えている:治療費の入口が別にある

保険料を抑える順序としては、まず人身傷害保険を車内のみで確保し、余力があれば車外へ広げるという組み立てが効率的です。補償そのものを外す判断は最後に回してください。

人身傷害保険の保険料は車の型式でも変わる

意外に知られていないのがこの点です。人身傷害保険の保険料は、乗っている車の型式によって変わります。

損害保険料率算出機構の資料には、型式別料率クラスを「対人賠償責任保険・対物賠償責任保険・人身傷害保険・車両保険ごとに定めています」と書かれています(2025年1月1日以降に保険期間の始期がある契約の場合)。

型式別料率クラスの区分(損害保険料率算出機構・2025年1月1日以降)

車種クラス数隣り合うクラス間の較差最安と最高の較差
自家用普通・小型乗用車1〜17の17クラス約1.1倍約4.3倍
自家用軽四輪乗用車1〜7の7クラス約1.1倍約1.7倍

出典: 損害保険料率算出機構「自動車保険 型式別料率クラスの仕組み(2025年1月1日以降)」

読み取れるのは、同じ補償内容でも車の型式だけで人身傷害の保険料が最大4.3倍動きうるということです。

車を買い替えるときに「補償は同じにしたのに保険料が変わった」と感じる原因の1つがここにあります。自分の車のクラスは、損害保険料率算出機構の型式別料率クラス検索で調べられます。検索に必要な型式は車検証に書かれています。

人身傷害保険を厚くすべき人・薄くしてよい人

判断を分けるのは、収入がいくら止まると家計が回らなくなるかです。

厚めに設定したほうがよい人

  • 世帯の収入を主に支えている:休業損害・逸失利益の比重が大きい
  • 自営業・フリーランス:働けない期間の補償が勤務先から出ない
  • 子どもや高齢の家族を乗せる機会が多い:同乗者もまとめて対象になる
  • 通勤で毎日長い距離を走る:事故に遭う機会そのものが多い

薄めでも成り立つ人

  • 勤務先の休業補償が手厚い:収入が止まるリスクを別で吸収できる
  • 就業不能保険・医療保険に加入済み:入口が重複する
  • 運転頻度が月に数回:ただし外すのではなく金額を下げる方向で

⚠️ 金額を下げる判断はしても、人身傷害保険そのものを外す判断は慎重にしてください。対人賠償は相手のための補償で、自分と同乗者には1円も出ません。自分側の入口はここしかありません。

保険料を下げる手段の全体像は自動車保険を安くする割引・特約の極意で整理しています。

よくある質問

人身傷害保険について、検索の多い質問を整理します。

Q1:人身傷害保険とはどんな保険ですか?

契約した車に乗っている人が事故でケガをしたとき、実際の損害額を過失割合に関係なく補償する保険です。治療費だけでなく、休業損害・逸失利益・慰謝料にあたる部分も対象になります。契約した保険金額の範囲内で、実際にかかった額が支払われます。

Q2:人身傷害保険と搭乗者傷害保険はどちらが必要ですか?

どちらか一方なら人身傷害保険です。搭乗者傷害保険はあらかじめ決めた額を払う定額払いのため、治療が長引いても金額が増えません。人身傷害保険は実損払いなので、実際にかかった額に応じて積み上がります。両方つけることもでき、その場合も重複して減らされることはありません。

Q3:人身傷害保険を使うと等級は下がりますか?

下がりません。人身傷害保険のみの支払いはノーカウント事故に該当し、事故件数として数えられません。三井ダイレクト損保は、翌年の等級ダウンがないことに加えて「翌年の事故有係数適用期間に加算はされません」と明記しています。ただし同じ事故で対物賠償や車両保険も使った場合は、そちらの区分に従って等級が下がります。

Q4:過失割合が自分にもある事故でも人身傷害保険は出ますか?

出ます。過失割合に関係なく、契約した保険金額の範囲内で実際の損害額が支払われます。損害額1,000万円で自分の過失が3割なら、相手の対人賠償から出る700万円との差額300万円を人身傷害保険が埋めます。過失があるほど、この保険の役割が大きくなります。

Q5:人身傷害保険は示談が終わるまで支払われませんか?

示談の成立を待たずに支払われます。ここが相手の対人賠償と大きく違う点です。過失割合でもめると示談は数か月から年単位に及ぶことがありますが、人身傷害保険は自分の契約なので、治療費や休業損害を先に受け取れます。

Q6:人身傷害保険の保険金額はいくらに設定すべきですか?

一律の正解はありませんが、判断軸は「働けなくなった期間の収入減をどこまで自分の保険で埋めたいか」です。世帯の収入を主に支えている人や自営業の人は、休業損害・逸失利益の比重が大きくなるため厚めに設定する意味があります。金額別の保険料差は会社によって幅があるので、同じ条件で見積もりを取って比べてください。

Q7:車を買い替えたら人身傷害保険の保険料が変わったのはなぜですか?

型式別料率クラスが変わったためと考えられます。型式別料率クラスは対人賠償・対物賠償・人身傷害・車両保険ごとに定められており、自家用普通・小型乗用車では最も安いクラスと最も高いクラスの保険料率に約4.3倍の較差があります(損害保険料率算出機構・2025年1月1日以降)。補償内容を変えていなくても、車の型式が変われば保険料は動きます。

まとめ:人身傷害保険は「相手から取れない分」を埋める補償

人身傷害保険について、要点を整理します。

この記事のまとめ
  • 人身傷害保険は実損払い、搭乗者傷害保険は定額払い。役割が違い重複しない
  • 過失割合に関係なく支払われるため、自分の過失分を埋められる唯一の入口
  • 示談を待たずに支払われる。治療費の立て替えが長引かない
  • 人身傷害保険のみの支払いはノーカウント事故=翌年は1等級上がる
  • 事故有係数適用期間にも加算されない(三井ダイレクト損保・2026年8月時点)
  • 保険料は車の型式でも変わる。自家用乗用車で最大約4.3倍の較差

対人賠償・対物賠償は相手のための補償です。自分と同乗者のケガに対しては、人身傷害保険が入口になります。ここを削ると、事故のあとで自分の過失分がそのまま家計に残ります。

金額を下げる調整はできても、補償そのものを外す判断は最後に回してください。

人身傷害の保険金額と補償範囲を変えたときの保険料差は、補償条件を揃えて並べれば1回で見えます。

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免責事項

※本記事は公開情報をもとにした整理です。補償の名称・支払い条件・等級の取り扱いは保険会社および契約条件により異なり、改定されることがあります。記事中の金額例は仕組みを説明するための設例で、実際の支払額を示すものではありません。最終的な契約・申込の判断は、各社の約款・重要事項説明書および公式サイトの最新情報をご確認のうえ行ってください。


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この記事を書いた人

家族でヴォクシーに乗っている、ごく普通の会社員のSaitoです。きっかけは、夜の高速道路で追突された事故でした。保険会社のフリーダイヤルに、15分間つながらなかった。あの時間の長さで、保険は契約書のスペックではなく、いざという場面での対応力で選ぶものだと痛感しました。

それから、主要な自動車保険を10社以上、実際に契約しては乗り換えて、対応を比べてきました。CMで見る「満足度が高い」という数字と、夜間のオペレーターやレッカー手配の速さは、必ずしも一致しません。このサイトでは、事故対応やロードサービス、弁護士特約の使いどころなど、カタログでは分からない部分を、家族を持つドライバーの目線でまとめています。

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