車両保険の免責金額は「1回目5万円・2回目以降10万円」が最多で、三井ダイレクト損保の契約者データでは55.2%を占めます(2025年3月時点)。免責をゼロに近づけるほど保険料は上がり、しかも小さな修理で保険を使って等級が3つ下がる失敗が起きやすくなります。
この記事でわかること
- 実際の契約者がどの免責金額を選んでいるかの割合データ(6パターンの実数)
- 「5-10万」「0-10万」などの数字の読み方と、増額方式・定額方式の違い
- 車対車免ゼロ特約で自己負担がゼロになる条件と、対象外になる事故
- 免責金額が「保険を使うかどうかの閾値」として働くという考え方
- 修理費がいくらを超えたら保険を使うべきかの損益分岐の出し方
結論から
免責金額を「自己負担が減るから低いほうがよい」と考えると、たいてい損をします。理由は保険料が上がるからだけではありません。
免責金額はもう一つの役割を持っています。修理費がいくらまでなら保険を使わないか、という判断を契約時に決めておく装置です。免責5万円なら、5万円以下の損害では保険金が出ないので、そもそも保険を使ってしまう失敗が起きません。
これが効いてくるのは等級です。車両保険を使えば3等級ダウンし、3年間の累積負担は約6.6万〜12.3万円規模になります。小さな修理で保険を使うと、修理費より等級のダメージのほうが大きくなるという逆転が起きます。
- 最多は「1回目5万円・2回目以降10万円」で55.2%(三井ダイレクト損保・2025年3月時点)
- 免責ゼロ(0-10万)を選ぶ人は15.7%にとどまる
- 免責金額を高くするほど保険料は安くなる(各社公式に明記)
- 車対車免ゼロ特約なら相手の車との衝突に限り1回目の自己負担がゼロ
- 保険を使う損益分岐は修理費>免責金額+3年間の累積追加保険料
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車両保険の免責金額とは
車両保険の免責金額とは、車の修理費のうち契約者が自分で負担する金額のことです。自己負担額とも呼ばれます。
チューリッヒは「免責金額とは被保険者が負担する損害保険金の一部」と説明し、免責金額を高くするほど保険会社が支払う額が少なくなるため、保険料が安くなるとしています。
修理費と免責金額の関係(免責5万円の場合)
| 修理費 | 保険金として出る額 | 自己負担 |
|---|---|---|
| 3万円 | 0円(免責以下のため出ない) | 3万円 |
| 5万円 | 0円 | 5万円 |
| 20万円 | 15万円 | 5万円 |
| 100万円 | 95万円 | 5万円 |
注目すべきは1行目と2行目です。免責金額以下の損害では保険金が1円も出ません。つまり免責金額は「この金額までは自分で払う」という約束であると同時に、「この金額までは保険を使えない」という線引きでもあります。
車両保険そのものの要否は車両保険は必要か|つける・つけないの判断で整理しています。
車両保険の免責金額は実際いくらに設定されているか
感覚ではなく実データがあります。三井ダイレクト損保が公開している契約者の設定割合です。
免責金額の設定割合(2025年3月時点・三井ダイレクト損保の契約者データ)
| 設定 | 割合 | 方式 |
|---|---|---|
| 5-10万円 | 55.2% | 増額方式 |
| 5-10万円(車対車免責ゼロ特約あり) | 15.8% | 増額方式 |
| 0-10万円 | 15.7% | 増額方式 |
| 10-10万円 | 5.5% | 定額方式 |
| 15-15万円 | 4.7% | 定額方式 |
| 5-5万円 | 3.1% | 定額方式 |

読み取れることは2つあります。ひとつは、1回目に5万円を設定する契約が55.2%と15.8%を合わせて71.0%を占めること。もうひとつは、自己負担ゼロから始める0-10万円が15.7%にとどまることです。
保険料を払ってまで自己負担をゼロにする設計は、実際にはあまり選ばれていません。この理由は次の章で説明する損得の構造にあります。
増額方式と定額方式の違い|0-10万・5-10万・5-5万の読み方
数字の読み方は簡単です。「5-10万円」は1回目の事故で5万円、2回目以降で10万円を自己負担するという意味になります。
2つの方式の違い
- 増額方式(0-10万円/5-10万円):1回目と2回目以降で金額が変わる。1回目を低く抑えられるが保険料は上がる
- 定額方式(5-5万円/10-10万円/15-15万円):何回目でも同じ金額。保険料を抑えやすい
増額方式は「1年間に何度も事故を起こす人は少ない」という前提の設計です。1回目だけ手厚くして、2回目以降は自己負担を増やします。
0-10万円は一見お得に見えますが、注意が必要です。1回目の自己負担がゼロになる代わりに保険料が上がるうえ、次の章で見るとおり「小さな損害で保険を使ってしまう」入口が開いてしまいます。
車対車免ゼロ特約で免責金額がゼロになる条件
免責を下げずに自己負担をゼロにする方法があります。車対車免ゼロ特約です。
車対車免ゼロ特約の適用条件(各社公式表記)
- 対象は1回目の事故のみ:保険期間中の1回目に限り免責金額がゼロになる
- 相手の車が確認できる衝突・接触に限る:単独事故や当て逃げは対象外
- セットできる契約に条件がある:免責金額が「1回目5万円・2回目以降10万円」の契約が前提
- 等級の条件がある会社もある:7等級以上のノンフリート契約という条件例がある
チューリッヒは「1年目の保険期間中に記名被保険者等と相手方の車との衝突が生じた場合に1年目の免責金額が0円となる」と説明しています。

ここが判断の分かれ目です。この特約は相手のいる事故だけを守るもので、単独事故や当て逃げでは働きません。実データで15.8%がこの特約を付けているのは、免責を0-10万円に下げるより効率がよいと判断されているからだと考えられます。
免責金額と特約の組み合わせは、保険料への効き方が会社によって違います。同じ補償条件で並べると差がはっきりします。
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車両保険の免責金額は「保険を使うかどうかの閾値」になる
ここがこの記事で一番伝えたい部分です。免責金額は自己負担額であると同時に、事故のときの判断を先に決めておく装置として働きます。
保険を使うと発生するもう一つのコスト
車両保険を使うと3等級ダウンし、事故あり係数が3年間続きます。当サイトの試算では、翌年の保険料上昇は2.6万〜6.9万円、3年間の累積負担は約6.6万〜12.3万円規模になります。
つまり保険を使う判断は「修理費が浮くか」ではなく、「修理費 − 免責金額」が「3年間の累積追加保険料」を上回るかで決まります。
損益分岐の考え方(免責5万円・累積負担6.6万円の場合)
| 修理費 | 保険金 | 3年の追加保険料 | 差引 |
|---|---|---|---|
| 8万円 | 3万円 | 6.6万円 | 3.6万円の損 |
| 12万円 | 7万円 | 6.6万円 | 0.4万円の得 |
| 30万円 | 25万円 | 6.6万円 | 18.4万円の得 |
計算上の分岐点は、免責金額に累積追加保険料を足した金額です。免責5万円で累積6.6万円なら、修理費が11.6万円を超えて初めて保険を使う価値が出ます。
免責を上げることの本当の効果
- 保険料そのものが安くなる
- 小さな損害で保険金請求が発生せず、等級を守れる
- 「使うべきか」の判断に迷う場面が減る
2番目が見落とされがちです。免責ゼロにすると、修理費3万円でも保険金が出てしまいます。出るなら使いたくなるのが人情ですが、3万円を受け取って6.6万円以上を3年かけて払うという結果になりかねません。
免責金額を5万円に置いておけば、この失敗は構造的に起きません。実データで71.0%が1回目5万円を選んでいるのは、この設計の合理性が経験的に共有されているからだと考えられます。
3等級ダウンの実額は3等級ダウンで保険料はいくら上がるかで等級別に計算しています。
免責金額を高く設定してよい人・低く抑えたほうがよい人
判断を分けるのは、貯蓄で吸収できる金額と、車の使い方です。
免責金額を高めに設定してよい人
- 10万円程度の出費を貯蓄で吸収できる:保険料を下げる効果をそのまま取れる
- 運転歴が長く事故が少ない:使う機会が少ないほど保険料の差が効く
- 等級が進んでいる:ダウンで失うものが大きいので、そもそも使いたくない
- 車の時価が下がっている:受け取れる上限が小さく、保険料を抑える価値が高い
免責金額を低めにしたほうがよい人
- まとまった自己負担が家計に響く:手元資金が薄いなら1回目を低く抑える意味がある
- 納車直後の新車:修理費が高額になりやすく、ローン残債がある場合も多い
- 運転歴が浅い:接触事故の頻度が高くなりやすい
- 交通量の多い環境で毎日運転する:相手のいる事故が起きやすく、車対車免ゼロ特約が生きる
順序としては、免責金額を先に決めてから、必要なら車対車免ゼロ特約を足すという組み立てが効率的です。免責を0-10万円に下げる選択は、この2手を試したあとで検討する順番になります。
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よくある質問
車両保険の免責金額について、検索の多い質問を整理します。
Q1:車両保険の免責金額はいくらにするのが一般的ですか?
「1回目5万円・2回目以降10万円」が最多です。三井ダイレクト損保の契約者データでは55.2%を占め、車対車免責ゼロ特約を付けた同じ設定の15.8%を合わせると71.0%になります(2025年3月時点)。自己負担ゼロから始まる0-10万円は15.7%にとどまります。
Q2:「5-10万円」とはどういう意味ですか?
保険期間中の1回目の事故で自己負担が5万円、2回目以降の事故で10万円になるという意味です。回数によって金額が変わるため増額方式と呼ばれます。これに対して「5-5万円」「10-10万円」のように何回目でも同じ金額になるものを定額方式と呼びます。
Q3:免責金額をゼロにするとどうなりますか?
自己負担なしで修理費が出る代わりに保険料が上がります。さらに小さな損害でも保険金が出るため、保険を使って等級が3つ下がる判断ミスが起きやすくなります。車両保険を使うと3年間で約6.6万〜12.3万円規模の追加保険料が発生するため、少額の修理で使うと損失のほうが大きくなります。
Q4:車対車免ゼロ特約とは何ですか?
保険期間中1回目の事故が相手の車との衝突・接触だった場合に限り、車両保険の免責金額がゼロになる特約です。単独事故や当て逃げなど相手方が確認できない事故は対象外です。免責金額が「1回目5万円・2回目以降10万円」の契約にセットでき、7等級以上といった条件を設けている会社もあります。
Q5:修理費がいくらなら車両保険を使うべきですか?
免責金額に3年間の累積追加保険料を足した金額が分岐点です。免責5万円で累積負担が6.6万円なら、修理費が11.6万円を超えて初めて使う価値が出ます。等級や年齢条件によって累積負担は変わるため、事故が起きたら保険会社に「使った場合の翌年以降の保険料」を確認してから判断してください。
Q6:免責金額を上げると保険料はどのくらい下がりますか?
下げ幅は車種・年式・等級・年齢条件によって大きく変わるため、一律の数値は示せません。各社とも公式サイトで金額を公表していないので、同じ補償条件で免責金額だけを変えた見積もりを取り、年間差額を確認するのが確実です。
Q7:相手のいる事故でも免責金額は自己負担になりますか?
相手に過失があり対物賠償保険金が支払われる場合は、その一部が免責部分に充てられて自己負担が出ないことがあります。ただし自分にも過失がある場合は、過失割合に応じて自己負担が残ります。相手が確認できない当て逃げでは対物賠償が使えないため、免責金額をそのまま負担します。
まとめ:免責金額は「使わない線」を先に引く設定
車両保険の免責金額について、要点を整理します。
- 最多は1回目5万円・2回目以降10万円で55.2%。特約付きを含めると71.0%
- 免責ゼロ(0-10万)は15.7%にとどまる=主流ではない
- 免責金額を高くするほど保険料は安くなる(各社公式に明記)
- 車対車免ゼロ特約は相手の車との衝突1回目に限り自己負担ゼロ。単独事故は対象外
- 保険を使う分岐点は免責金額+3年間の累積追加保険料(免責5万なら11.6万円前後)
- 免責を上げる本当の効果は小さな事故で保険を使う失敗を構造的に防ぐこと
免責金額を「損する金額」と捉えると判断を誤ります。実際には、事故が起きたときに冷静な判断ができなくなる前に、保険を使わない線をあらかじめ引いておく設定です。
まず1回目5万円を基準に置き、相手のいる事故が心配なら車対車免ゼロ特約を足す。この順序で組み立てれば、保険料と等級の両方を守れます。
免責金額の設定は、実額を並べれば1回で決められます。補償条件を揃えて各社を比べてみてください。
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免責事項
※本記事は公開情報をもとにした整理です。免責金額の設定パターン・特約の名称や適用条件・保険料は保険会社および契約条件により異なり、改定されることがあります。最終的な契約・申込の判断は、各社の約款・重要事項説明書および公式サイトの最新情報をご確認のうえ行ってください。

