自動車保険の保険料は、年末調整でも確定申告でも所得控除の対象になりません。損害保険料控除は平成19年分から廃止され、残ったのは地震保険料控除です。個人事業主が仕事で使う車なら、業務に使った部分を必要経費にできます。
この記事でわかること
- 自動車保険が控除にならない理由と、廃止された損害保険料控除のいきさつ
- 年末調整・確定申告で控除になる保険の一覧と上限額
- 人身傷害・搭乗者傷害が医療保険の控除にならない理由
- 損保会社から控除証明書が届いたときの見分け方
- 個人事業主が経費にできる範囲と、契約の使用目的の確かめ方
先に結論から
年末調整の書類に自動車保険を書く欄はありません。任意保険も自賠責保険も、所得控除の対象外です。
控除とは別に、個人事業主が仕事で使う車なら、保険料のうち業務の分を必要経費に入れられます。会社員がマイカーを通勤や仕事に使っていても、自分の年末調整で保険料を引く仕組みはありません。
この記事が扱う範囲
- 扱うのは自動車保険の保険料が税の計算でどう扱われるかです
- 帳簿の勘定科目や仕訳の書き方は扱いません。会計ソフトの案内か税理士に確かめてください
- 法人で車を持つときの契約の型は法人・事業用の自動車保険はどう選ぶ?が本体です
自動車保険が年末調整・確定申告で控除にならない理由
自動車保険の保険料が控除にならないのは、損害保険料控除という仕組みが平成19年分から廃止されたからです。国税庁は「平成18年の税制改正で、平成19年分から損害保険料控除が廃止されました」と説明しています。
それまでは、火災保険や自動車保険などの損害保険料にも控除がありました。廃止と入れ替わりにできたのが地震保険料控除で、対象は地震の損害を補償する保険に絞られています。
車に関わる保険料と所得控除(令和8年4月1日現在の法令)
| 保険・費用 | 所得控除 | 理由 |
|---|---|---|
| 自動車保険(任意保険) | 対象外 | 損害保険料控除が平成19年分から廃止 |
| 自賠責保険 | 対象外 | 同上(強制保険でも控除の仕組みはない) |
| 人身傷害・搭乗者傷害 | 対象外 | 傷害保険契約は生命保険料控除の対象に入らない |
| 住まい・家財の地震保険 | 地震保険料控除(最高5万円) | 居住用の家屋・生活用動産が対象 |
出所: 国税庁「No.1145 地震保険料控除」(平成19年分から損害保険料控除が廃止・控除額の上限)、国税庁「No.1146 地震保険料控除の対象となる保険や共済の契約」(居住用家屋・生活用動産)、国税庁「No.1141 生命保険料控除の対象となる保険契約等」(傷害保険契約は該当しない)。
自動車保険の保険料は「控除」ではなく、仕事で使う分だけ「経費」になる
- 自動車保険の保険料
- 年末調整・確定申告の所得控除対象外。損害保険料控除は平成19年分から廃止
- 個人事業主の必要経費業務に使った部分は入れられる。私用と兼ねるなら業務の分だけ
- 会社員のマイカー自分の年末調整では引けない。会社の負担があるかは勤務先の規程しだい
図:国税庁タックスアンサー No.1145・No.2210(令和8年4月1日現在法令等)から整理。
旧長期損害保険料の経過措置も自動車保険には当たらない
損害保険料控除が廃止されたあとも、古い長期契約だけは「旧長期損害保険料」として控除が残っています。ただ、国税庁が示す条件は次の3つで、全部を満たす必要があります。
- 平成18年12月31日までに締結した契約
- 満期返戻金等があり、保険期間が10年以上の契約
- 平成19年1月1日以後に契約の変更をしていない
自動車保険は1年契約が中心で、長くても数年です。保険期間10年以上・満期返戻金ありという条件にあたらないので、この経過措置で控除になることはありません。
人身傷害や搭乗者傷害も医療保険の控除にならない
人身傷害や搭乗者傷害は、事故でけがをしたときに保険金が出る補償です。けがの治療に使うお金なので、医療保険と同じ控除になると考える人もいるでしょう。
国税庁は、損害保険会社の契約で介護医療保険料控除になるのは「医療費支払事由に基因して保険金等が支払われる保険契約」で、傷害保険契約は該当しないとしています。自動車保険の中の補償であっても、控除の欄に書けるものはありません。
年末調整・確定申告で控除になる保険の一覧
控除になる保険は、生命保険・介護医療保険・個人年金保険と、地震保険に限られます。自動車保険と同じ損保会社が扱う商品でも、地震保険や医療保険なら控除の対象です。
保険料の所得控除の種類と上限(令和8年4月1日現在の法令)
| 控除の種類 | 対象の保険 | 控除の上限 |
|---|---|---|
| 生命保険料控除 | 生命保険・介護医療保険・個人年金保険 | 3つの合計で12万円 |
| 地震保険料控除 | 住まい・家財の地震保険 | 5万円 |
| 地震保険料控除(旧長期損害保険料) | 平成18年までに締結した10年以上の長期契約 | 1万5,000円(地震保険料と合わせて5万円) |
出所: 国税庁「No.1140 生命保険料控除」(合計額が12万円を超えるときは12万円)、国税庁「No.1145 地震保険料控除」(地震保険料は最高5万円・旧長期損害保険料は最高1万5,000円・両方あるときは合計で最高5万円)。
火災保険に地震保険を付けているなら、控除の対象は地震保険の部分だけになります。年末調整の書類に書くのは、火災保険の会社から届く地震保険料控除証明書の金額です。
損保会社から控除証明書が届いたときの確かめ方
自動車保険の会社から控除証明書が届くと、自動車保険の分だと思いがちです。中身はほとんどが地震保険料控除証明書で、自動車保険の保険料は載っていません。
損保会社6社と日本損害保険協会は、2021年に控除証明書を電子で出す共同の仕組みを始めました。そのときの案内でも、損害保険業界が作る控除証明書のほとんどは地震保険料控除証明書だと書かれています。対象は地震保険と、傷害・疾病・介護保険などの一部の保険(第三分野保険)です。
控除証明書が届いたら見るところ
- 証明書に書かれた保険の種類と証券番号を見る
- 自動車保険の証券番号と違えば、同じ会社の火災保険(地震保険)か医療・介護の保険のもの
- 年末調整なら勤務先に出す。確定申告なら申告書に添付するか提示する
- 見覚えのない契約なら、証明書に書かれた問い合わせ先に確かめる
出所: あいおいニッセイ同和損保ほか6社・日本損害保険協会「損害保険会社の保険料控除証明書発行における共同システムを構築」(2021年10月18日・控除証明書のほとんどが地震保険料控除証明書)、国税庁「No.1145 地震保険料控除」(確定申告では証明書を添付か提示・年末調整で控除された場合は不要)。
自動車保険の証明書は控除用ではない
自動車保険で手元に届く書類は、保険証券や契約内容の確認書が中心です。中断証明書や事故の証明のように、等級や事故の手続きで使う書類もあります。
どれも年末調整・確定申告の控除には使いません。証券の見方は自動車保険の証券とはにまとめています。
個人事業主が仕事で使う車は保険料を必要経費にできる
個人事業主なら、仕事で使う車の自動車保険料を事業所得の必要経費に入れられます。控除とは仕組みが違い、売上から差し引く費用として扱う形です。
ただし、私用と兼ねている車は全額にはできません。国税庁は、家事と業務の両方にかかわる費用は、業務の遂行上必要な部分を明らかに区分できる場合に、その部分だけが必要経費になるとしています。
車の使い方別に経費にできる範囲(令和8年4月1日現在の法令)
| 車の使い方 | 経費にできる範囲 | 区分の手がかり |
|---|---|---|
| 仕事専用の車 | 業務の費用として扱える | 仕事以外に使っていないこと |
| 仕事と私用の兼用 | 業務に使った部分だけ | 走行距離や使った日数の記録 |
| 私用だけの車 | 経費にならない | ― |
出所: 国税庁「No.2210 必要経費の知識」(家事関連費は業務の遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる金額に限る)。割合の出し方や帳簿のつけ方は、税務署か税理士に確かめてください。
保険料を経費にする前に、税と保険の両方で確かめる
- 仕事で車を使っている
- 1個人事業主か会社員は自分の年末調整で引けない。法人名義の車は会社の経費
- 2私用と兼ねているか兼用なら業務の部分だけ。走行距離や日数の記録で区分する
- 3契約の使用目的月15日以上仕事で使うなら「業務」の区分(SOMPOダイレクトの基準)
- 4保険会社へ連絡使い方が変わったら通知する。連絡しないと保険金が出ないことがある
図:国税庁 No.2210 と SOMPOダイレクト「自動車保険の使用目的」から整理。使用目的の日数基準は保険会社ごとに確かめる。
経費にするなら契約の使用目的を確かめる
保険料を経費に入れるほど仕事で車を使うなら、契約の使用目的が実際の使い方と合っているかも見ておきます。税の申告と保険の契約は別の手続きなので、片方だけ直して終わることがよくあります。
SOMPOダイレクトの基準では、1年を通じて月15日以上仕事で使うなら「業務」、通勤・通学で月15日以上なら「通勤・通学」です。どちらも月15日未満なら「日常・レジャー」に入ります。
使用目的を偽って申告すれば、告知義務違反です。使い方が変わったのに連絡しないまま事故が起きると、保険金が支払われなかったり契約を解除されたりすることがある、と同社は案内しています。独立して車を仕事に使い始めたときは、確定申告の前に契約先へ連絡しておくと安心です。
会社員と法人の車の場合
会社員がマイカーを通勤や営業に使っていても、自分の年末調整や確定申告で保険料を引く欄はありません。会社が保険料の一部を負担するかどうかは、勤務先の規程しだいです。
法人名義で契約し会社が保険料を払う車なら、保険料は会社の経費として扱えます(SOMPOダイレクト)。何台から契約の型が変わるかは法人・事業用の自動車保険をご覧ください。
控除がない自動車保険料を抑える見直し方
控除で取り戻せない以上、保険料そのものを契約の中身で下げるしかありません。見直す順番は、使い方の申告・運転する人・車両保険の3か所です。
保険料を見直すときに確かめること
- 使用目的と年間の走行距離が、今の使い方に合っているか
- 運転者の範囲と年齢条件が、実際に運転する人に合っているか
- 車両保険の型と免責金額(自己負担額)
- 付けたままの特約に、使わないものがないか
- 使える割引(ゴールド免許・新車・早期契約など)を見落としていないか
使用目的は、実際より軽い区分で申告すると前の章のとおり補償の問題になります。下げる余地があるのは、仕事で使わなくなった、通勤をやめたなど、使い方が本当に変わった場合です。
割引の種類は自動車保険の割引制度一覧、免責金額の決め方は車両保険の免責金額はいくらが最適?で確かめられます。
よくある質問
Q1:自動車保険は年末調整で控除できますか?
できません。損害保険料控除は平成19年分から廃止され、自動車保険の保険料を書く欄は年末調整の書類にありません(国税庁 No.1145)。年末調整で控除になる保険は、生命保険・介護医療保険・個人年金保険と地震保険です。
Q2:自動車保険はなぜ控除の対象外?
平成18年の税制改正で、火災保険や自動車保険などの損害保険料控除がなくなったためです。入れ替わりに地震保険料控除ができ、控除の対象は住まいと家財の地震保険に絞られました。古い長期契約の経過措置も、保険期間10年以上・満期返戻金ありが条件なので自動車保険は当たりません。
Q3:自動車保険の会社から控除証明書が届きました。何の証明書ですか?
ほとんどは地震保険料控除証明書です。損保会社6社と日本損害保険協会の2021年の案内でも、業界が作る控除証明書のほとんどが地震保険料控除証明書とされています。証明書の保険の種類と証券番号を見ると、火災保険(地震保険)や医療・介護の保険のものだと見分けられるはずです。
Q4:個人事業主は自動車保険を確定申告で経費にできますか?
仕事で使う車なら、業務に使った部分を必要経費にできます。私用と兼ねる車は、業務に必要な部分を明らかに区分できる場合に限り、その部分だけです(国税庁 No.2210)。走行距離や使った日数の記録を残しておくと区分しやすくなります。
Q5:人身傷害保険は医療保険の控除になりますか?
なりません。損害保険会社の契約で介護医療保険料控除になるのは、医療費支払事由に基因して保険金が支払われる契約で、傷害保険契約は該当しないと国税庁は示しています(No.1141)。自動車保険の人身傷害・搭乗者傷害も控除の欄には書けません。
Q6:自賠責保険も控除の対象外ですか?
対象外です。自賠責保険も損害保険の一つで、平成19年分から損害保険料控除がなくなったため控除の仕組みがありません。個人事業主が仕事で使う車なら、任意保険と同じく業務の部分を必要経費に入れる扱いになります。
参考にした一次資料
- 国税庁「No.1145 地震保険料控除」(令和8年4月1日現在法令等・平成19年分から損害保険料控除が廃止・地震保険料は最高5万円・旧長期損害保険料は最高1万5,000円・旧長期の3条件・確定申告では証明書を添付か提示)
- 国税庁「No.1146 地震保険料控除の対象となる保険や共済の契約」(居住用家屋・生活用動産)
- 国税庁「No.1140 生命保険料控除」(合計の上限12万円)
- 国税庁「No.1141 生命保険料控除の対象となる保険契約等」(損害保険会社の契約は医療費支払事由に基因するもの・傷害保険契約は該当しない)
- 国税庁「No.2210 必要経費の知識」(家事関連費は業務に必要な部分を明らかに区分できる金額に限る)
- あいおいニッセイ同和損保ほか6社・日本損害保険協会「損害保険会社の保険料控除証明書発行における共同システムを構築」(2021年10月18日・控除証明書のほとんどが地震保険料控除証明書)
- SOMPOダイレクト「自動車保険の使用目的」(2026年5月18日更新・月15日以上の基準・告知義務と通知義務)
- SOMPOダイレクト「自動車保険料は確定申告で控除できる?」(会社で支払う自動車保険料は経費として扱える)
まとめ:自動車保険は控除でなく経費で考える
自動車保険の保険料は、年末調整でも確定申告でも控除になりません。損害保険料控除が平成19年分で廃止され、残ったのは地震保険料控除だけです。
損保会社から届く控除証明書は、ほとんどが地震保険の分です。個人事業主が仕事で使う車なら、業務の部分を必要経費に入れ、契約の使用目的が実際の使い方と合っているかも確かめておきます。
この記事のまとめ
- 自動車保険・自賠責保険は所得控除の対象外
- 損害保険料控除は平成19年分から廃止。旧長期の経過措置も自動車保険は当たらない
- 人身傷害・搭乗者傷害も介護医療保険料控除にならない(傷害保険契約は該当しない)
- 損保会社の控除証明書は、ほとんどが地震保険料控除証明書
- 個人事業主は、仕事で使った部分を必要経費にできる
- 仕事で月15日以上使うなら、契約の使用目的も「業務」か確かめる
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免責事項
※本記事は、国税庁タックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)と、損害保険会社・日本損害保険協会の公開情報をもとにした整理です(2026年10月時点)。税の扱いは個別の事情で変わることがあります。経費の割合や申告の方法は、所轄の税務署か税理士にご確認ください。保険の使用目的の基準は保険会社ごとに異なります。

