追突事故は追突した側の前方不注意が原因になりやすく、基本の過失割合は10対0です。ところが過失0だと自分に賠償責任が発生しないため、弁護士法の規定により自分の保険会社は示談交渉を代行できません。相手の保険会社と1対1で向き合うことになり、弁護士費用特約の有無で結果が変わります。
この記事でわかること
- 追突事故で過失割合が10対0になりやすい理由と、そうならない例外
- 過失0のとき自分の保険会社が示談交渉できない法律上の理由
- 相手の保険会社と1対1になったときに使える手段3つ
- 追突事故で車両保険を使うと等級はどうなるか(当て逃げとの違い)
- 物損で処理したあとに痛みが出たときの切り替え
結論から
追突された側にとって、過失0はいちばん有利な立場のはずです。ところが手続きの面では逆になります。
過失が0だと、自分の保険会社は示談交渉に入れません。賠償する義務がない以上、保険会社には交渉する立場がないからです。結果として、相手の保険会社と自分が直接やり取りすることになります。
追突事故で「話が進まない」「提示された金額が妥当か分からない」となるのは、多くがこの構造から来ています。
- 追突事故の基本過失割合は10対0(追突した側の前方不注意が原因になりやすい)
- 過失0では自分の保険会社が示談代行できない(弁護士法の規定)
- 使える手段は弁護士費用特約・人身傷害保険・紛争処理センターの3つ
- 車両保険を使えば3等級ダウンだが、無過失事故特約が働く余地がある
- 物損で処理すると治療費が請求しにくくなる=痛みがあれば人身へ切り替える
弁護士費用特約が付いているかは保険証券で分かります。付けていない場合の追加保険料も見積もりで確認できます。
追突事故の過失割合が10対0になりやすい理由
追突事故は、後ろから来た車の前方不注意で起きることがほとんどです。
前を走る車には、後ろから追突されるのを避ける手立てがありません。だから停止中や減速中に追突された場合、基本の過失割合は追突した側が10、追突された側が0となります。
10対0になりやすい場面
- 信号待ちで停車中に追突された
- 渋滞で停止中に追突された
- 前方の状況に応じて減速中に追突された
ただし例外もあります。追突された側の行動が事故に影響していた場合です。
10対0にならないことがある場面
- 理由のない急ブレーキ:後続車が避けられない状況を自ら作った場合
- 駐停車が禁止されている場所での停車:停まっていた場所自体に問題がある場合
- ブレーキランプが点灯しない状態:整備不良で後続車が減速に気づけない場合
- 後退(バック)中の接触:追突ではなく別の類型として扱われる場合
過失割合の決まり方そのものは交通事故直後の対応マニュアルで扱っています。
追突事故で過失0だと自分の保険会社は示談交渉できない

ここが多くの人にとって想定外の部分です。保険に入っているのに、保険会社が交渉してくれません。
東京海上ダイレクト(旧イーデザイン損保)は、この理由をこう説明しています。「『もらい事故』などでお客さまに責任割合がない場合は、賠償責任が発生しないため、弁護士法の規定により保険会社が示談交渉を行うことはできません」(2026年8月時点)。
なぜ保険会社が入れないのか
保険会社が契約者に代わって示談交渉できるのは、その保険会社に保険金を支払う義務があるときに限られます。
自分の過失が0なら、相手に払う賠償金はありません。支払う義務がない以上、保険会社は当事者ではなくなります。当事者でない者が報酬を得て他人の法律事務を扱うことは、弁護士法で禁じられています。
過失の有無で変わる交渉の構図
| 自分の過失 | 自分の保険会社の役割 | 誰が相手と交渉するか |
|---|---|---|
| あり(例:2割) | 示談交渉を代行できる | 保険会社どうし |
| なし(0) | 示談交渉を代行できない | 自分(または委任した弁護士) |
表の下段が追突事故の典型です。過失がないほうが手続きは孤立します。
相手の保険会社は、示談交渉のプロです。こちらは事故の当事者であって交渉の素人になります。この非対称が、追突事故で提示額をそのまま受けてしまう原因になります。
追突事故で相手の保険会社と1対1になったときの手段

放っておくと不利になる構図なので、対抗する手段を先に押さえます。
使える手段3つ
- 弁護士費用特約を使う:交渉そのものを弁護士に委任する
- 人身傷害保険を使う:示談を待たずに自分の契約から支払いを受ける
- 交通事故紛争処理センターを使う:中立の第三者に間に入ってもらう
1番目が本命です。弁護士費用特約は、相手方との交渉を弁護士に委任する費用を補償する特約です。過失0の事故でこそ価値が出ます。保険会社が入れない穴を埋める役割だからです。
特約の要否と会社別の扱いは弁護士費用特約は廃止になった?で整理しています。
2番目も効きます。人身傷害保険は自分の契約なので、示談の成立を待たずに治療費や休業損害を受け取れます。過失割合でもめて示談が長引いても、生活のほうは先に回せます。
しかも人身傷害保険のみの支払いはノーカウント事故で、翌年の等級は下がりません。事故有係数適用期間にも加算されません。仕組みは人身傷害保険とはで扱っています。
3番目は、話がまとまらないときの受け皿です。示談の進め方全般は交通事故の示談で失敗しない全知識で扱っています。
弁護士費用特約は年間数千円程度で付けられることが多い特約です。付いていない契約なら、更新前に見積もりで差額を確認する価値があります。
弁護士費用特約ありの条件で各社の保険料を比較する(PR)詳細はリンク先をご確認ください
追突事故で車両保険を使うと等級はどうなるか
相手の対物賠償で修理できるなら、自分の車両保険を使う必要はありません。
問題は、相手が任意保険に入っていない場合や、相手の保険会社が過失割合を争ってきた場合です。修理を先に進めたいなら、自分の車両保険を使うことになります。
車両保険を使ったときの扱い
| 状況 | 等級 | 事故有係数適用期間 |
|---|---|---|
| 車両保険を使う(無過失事故特約なし) | 3つ下がる | 3年つく |
| 車両保険を使う(無過失事故特約が適用) | 下がらない | 加算されない |
| 相手の対物賠償で修理する | 変わらない | 変わらない |
2行目が追突事故の救いです。車両保険無過失事故特約は、相手の車と運転者が確認できる事故で自分の過失がゼロのときに働きます。追突事故は相手がその場にいるので、条件を満たす余地があります。
ここが当て逃げされたときの保険との決定的な違いです。同じ「自分に過失がない」でも、当て逃げは相手を特定できないため特約が働きません。
特約の適用条件は会社で違う
無過失事故特約は自動でセットされている会社もあれば、任意の特約として用意されている会社もあります。名称も「車両無過失事故に関する特約」など会社ごとに異なります。
自分の契約に付いているかは保険証券で確認してください。追突事故に遭ってから調べても、付けることはできません。
3等級ダウンした場合の実額は3等級ダウンで保険料はいくら上がるかで等級別に計算しています。
追突事故で物損として処理したあとに痛みが出たら
追突事故で最も後悔につながりやすいのが、この場面です。
事故直後は興奮していて痛みを感じないことがあります。その場で「軽い接触だから物損で」と処理すると、あとから首や腰に症状が出たときに困ります。
物損のままだと不利になる点
- 人身事故として記録されていない:治療費と事故の因果関係を示しにくい
- 自賠責保険の枠が使いにくい:ケガの補償は自賠責が土台になる
- 時間が経つほど因果関係を争われやすい:事故から日が空くほど不利
対処は決まっています。痛みが出たら、その時点で人身事故への切り替えを届け出ることです。医師の診断書を取り、警察へ提出します。
日が空くほど因果関係が争われやすくなるため、違和感の段階で受診しておくほうが安全です。切り替えの手順は交通事故後に痛みが…物損から人身への切り替え手順で扱っています。
追突事故に遭った直後にやること

順序を間違えると、あとから取り返しにくくなります。
その場でやること
- 警察に届け出る:交通事故証明書が出る状態にする
- 相手の情報を控える:氏名・連絡先・車のナンバー・保険会社名と証券番号
- 現場の写真を撮る:2台の位置関係・損傷部位・道路状況・信号の状態
- ドライブレコーダーの映像を保存する:上書きされる前に取り出す
- 自分の保険会社に連絡する:交渉はできなくても助言と手続きは受けられる
- その日のうちに受診する:痛みがなくても診察を受けておく
5番目を飛ばさないでください。示談交渉を代行できなくても、保険会社は弁護士費用特約の案内や人身傷害保険の手続きを進めてくれます。「交渉してもらえないなら連絡しなくていい」は誤解になります。
事故直後の報告手順は自動車保険の事故後の報告手順で扱っています。
よくある質問
追突事故について、検索の多い質問を整理します。
Q1:追突事故の過失割合はいつも10対0ですか?
停止中や減速中に後ろから追突された場合は、基本的に追突した側が10、追突された側が0になります。ただし理由のない急ブレーキ、駐停車禁止場所での停車、ブレーキランプの不点灯など、追突された側の行動が事故に影響していた場合は0にならないことがあります。
Q2:追突事故で自分の保険会社は示談交渉してくれますか?
過失割合が10対0の場合はしてくれません。自分に賠償責任が発生しないため、弁護士法の規定により保険会社が示談交渉を行えないからです。東京海上ダイレクトも、責任割合がない場合は保険会社が示談交渉を行うことはできないと明記しています。相手の保険会社とは自分か、委任した弁護士が交渉します。
Q3:追突事故で弁護士費用特約は使えますか?
使えます。むしろ過失0の事故でこそ価値が出る特約です。自分の保険会社が示談交渉に入れない穴を、弁護士への委任で埋める形になります。相談費用と委任費用が補償されるため、自己負担なく弁護士に任せられるのが一般的です。付帯の有無は保険証券で確認してください。
Q4:追突事故で車両保険を使うと等級は下がりますか?
原則は3等級ダウンですが、車両保険無過失事故特約が適用されれば下がりません。この特約は相手の車と運転者が確認できる事故で自分の過失がゼロのときに働くため、相手がその場にいる追突事故は条件を満たす余地があります。付帯の有無と名称は会社によって異なります。
Q5:追突事故のあとで首が痛くなったらどうすればいいですか?
その時点で医療機関を受診し、診断書を取って警察へ人身事故への切り替えを届け出てください。物損のまま放置すると、治療費と事故の因果関係を示しにくくなります。事故から日が空くほど争われやすくなるため、違和感の段階で受診しておくのが安全です。
Q6:相手の保険会社が提示した金額はそのまま受け入れるべきですか?
すぐに受け入れる必要はありません。過失0の事故では自分の保険会社が交渉に入れないため、提示額が妥当かを判断する材料がこちら側に不足しがちです。弁護士費用特約があれば弁護士に精査を任せられます。特約がない場合は、交通事故紛争処理センターなど中立の窓口を検討してください。
Q7:追突事故で人身傷害保険を使うと等級は下がりますか?
下がりません。人身傷害保険のみの支払いはノーカウント事故に該当し、翌年の等級は下がらず、事故有係数適用期間にも加算されません。示談の成立を待たずに治療費や休業損害を受け取れるため、過失割合でもめている間の生活を先に立て直せます。
まとめ:追突事故は「過失0だから孤立する」構造を先に知る
追突事故について、要点を整理します。
- 停止中・減速中の追突は基本10対0。ただし例外もある
- 過失0では自分の保険会社が示談交渉できない(弁護士法の規定)
- 穴を埋める手段は弁護士費用特約・人身傷害保険・紛争処理センター
- 車両保険を使っても無過失事故特約が働けば等級は下がらない
- 当て逃げと違い相手が特定できるため、特約の条件を満たす余地がある
- 痛みが出たら人身事故へ切り替える。日が空くほど不利になる
追突事故でいちばん損をするのは、「自分は悪くないのだから任せておけば大丈夫」と考えて何もしないパターンです。悪くないからこそ、味方であるはずの保険会社が交渉に入れません。
事故に遭う前にできることは1つだけです。弁護士費用特約と無過失事故特約が自分の契約に付いているかを、いま確認しておくこと。どちらも事故のあとでは付けられません。
弁護士費用特約を付けた場合と付けない場合の保険料差は、補償条件を揃えて並べれば1回で見えます。
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免責事項
※本記事は公開情報をもとにした整理です。過失割合は事故ごとの個別の事情により判断され、記事中の割合は基本的な考え方を示すものです。特約の名称・適用条件・付帯方法は保険会社および契約条件により異なり、改定されることがあります。個別の法律判断が必要な場合は弁護士にご相談ください。最終的な契約・申込の判断は、各社の約款・重要事項説明書および公式サイトの最新情報をご確認のうえ行ってください。

